さて、トロンのすばやい剣技のおかげで、竹を大量に切ることが出来た。
男たちはそれを肩に担ぐと、あっという間にログハウス前に流しソーメン用の竹を集めた。
「はぁーっ!やっぱり大した男やなぁ〜♪うち、惚れ直したわー」
アリアは感嘆の息をつくと、うんうんと頷いた。
何気にラブラブなオルファリオン夫妻であった。
ハーメルやクラーリィやトロンは互いにいつも
特大バイオリンや十字架の尺杖や三本の剣といった
重いものを担いだり持ったりしているため、竹を運ぶことなどなんてこともなかった。
(※サスフォーも元スフォルツェンド兵士なのでそこそこ力はあります。)
得意気なのはその主な三人。
「どうだ?フルート。俺様のウルトラすばやいこの竹の集めようを・・・」
「ミュゼット。これが男というものだぜ?アウトドアでは男の力は不可欠だろう?」
何故か、二人のバックはキラキラとしたオーラが放っている。
バリバリ彼女を意識している。
そこで、トロンは「けっ」と呟いた。
「なーにキザなこと言ってるんだよ。
 オレの剣がなかったらお前らもっと大恥かいてたんだぜ。
 というわけで・・・ゴホン。コルネット。
 余の知恵と剣裁きがあったおかげで流しソーメンが・・・・」
「きゃーっこれがワラビー?」
「見て下さいっ♪きのこですvv食べれるかなぁ」
「お姉さまっ(汗)それは毒キノコですわ(汗)」
・・・全く聞いていなかった。

キラキラしてた背景オーラは、瞬く間に殺風景な背景へと変わる。
男三人の後ろには、寂しく風が吹いた。
「哀れな人たち・・・」
エリがそう言って額に手を当てる。
「まぁまぁ、三人とも気を落とさないで。流しソーメン楽しくやろうよっ」
ライエルが三人をなだめるように催促する。
「お前はいいよな・・・」
「全くだ・・・」
ジトーとしたハーメルとクラーリィの視線が、ライエルの方へと突き刺す。
後ろで出番のないディオンがのほほんと笑っているが、
これも自分は彼女とうまくいっている故の余裕の模様。
カデンツァはそんな光景に苦笑いをすると、
「さーてと」
と、流しソーメンのセッティングに取り掛かった。

「よし、薬味も麺つゆも用意できたわ」
「そうめんの茹であがり具合も丁度いいわよー」
「ほな、みんなのとこに運ぼーか」
女性陣はそれぞれ器や薬味や鍋やザルなどを運んできた。
いよいよ流しそうめんの開始だ。どうやら交代でそうめんを流すらしい。
男性陣はもう座っていた。
どうやら、(下流の方が色々な面で不利なので)席をクジできめたらしい。
クラーリィは一番上の席を引いたようだった。

「じゃあ最初は私がそうめんを流す係の担当しますね」
エリは少々乱雑にそうめんを水と一緒に竹に流す。
いきなり流れてきたので皆戸惑った。
「エリ、もっと麺を少しずつ入れたほうがええよ」
こういう面にも性格は現れるものだな、と一同思った。
「あ、色付き麺!」
ハーメルがまるで子供のように、赤い色のついたそうめんを取った。
「ハーメル、はしたないわよ」
「お前、この赤色そうめんを手に入れたものが
 この大会の勝者となることを知らないのか!?」
「そんなローカルルール知らないわよ!大会って何!?」
フルートは呆れる。
「まったくあいつは・・・」
クラーリィも同じように呆れていたが、横を見て驚いた。
「ピンクのそうめん・・・」
ミュゼットの瞳が、キラキラ輝いている。
「・・・!」
クラーリィはその時思った。こいつのために色付きそうめんをとってやるべきだと。
ハーメルみたいに騒いであからさまに欲しがることはしないが、
ミュゼットは明らかに色付き麺に興味を抱いているのだ。
それに、
「ああ、あんまりとれへんかったわ」
「そうか?じゃあオレのやつわけてやろうか」
と、なんだかこういうのはとてもラブラブっぽいからだ。
(そしてやはり仲睦まじいオルファリオン夫妻)

「・・・ちっ!」
クラーリィは必死になって色付き麺を取ろうとした。
けれどもこういうときに限ってうまくはいかないもの。
「クラーリィはん色付き麺狙ってへん?どないしたんやろな」
「ハーメルに勝たすのだけは嫌ってやつじゃないか?」
周囲の人たちは呆れている。
「ちょ、クラーリィさん!水が飛ぶからやめてくれる!?」
迷惑そうなのは、近くにいるディオンやエリだった。
「私は料理が苦手だから・・・生姜をおろすのをやったんだ」
「そうですかサイザーさん!この生姜とてもおいしいですよ!」
「トロン様、おつゆのおかわりはいかがですか?」
「あ、ああ・・・貰う!」
全然聞いて無い人たちもいるが。
カデンツァはクラーリィの目的を察したらしく、
「もっと別に気を引く方法はあるでしょうに、馬鹿馬鹿しい」
と一人呟いた。
そして、エリに言う。
「エリ、そろそろ代わるわ」
「そう?ありがと、カデンツァ」
そしてエリからそうめんの入ったザルを受け取ると、カデンツァは言う。

「言っておくけどもしこれ以降騒ぎを起こしてさっきのエリみたいな被害を
 私がこうむった場合、毒を流すことを警告しておきます」

ぴしっ・・・と、皆の表情が凍った。
そしてそれ以降、平和な流しそうめんが行われた。


無事(?)に流しソーメンを終えた仲間たち。
夕飯まで時間があるため、それまでをフリータイムとすることにした。
散策に行くのもよし。昼寝をするのもよし。
各ログハウスに分かれると、クラーリィとハーメルは
それぞれの部屋でバタンとベッドの上に横になった。
朝からずっと歩き通しで、なおかつ竹林から竹を往復で運んできているのだ。
倒れるのも無理はない。
ちなみに、トロンはコルネットにマッサージをしてもらっていた。

昼寝をしている男性陣とは対照的に、女性陣は元気いっぱい。
「ねぇー、これから近くを散歩しない?」
「うんっ行く行く〜♪」
すると、コルネットはバツが悪そうな顔をしてちろっと舌を出した。
「コルは、トロン様のマッサージをしておりますので、二人でごゆっくりして来て下さい☆」
「じゃあ、お言葉に甘えて♪いきましょ。ミュゼット」
「はい〜♪コル、クラたちによろしく伝えといてね」
そう言い残すと、二人は森の中へと飛び出した。






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