『また一緒に遊ぼう』とミュゼットたちと約束して数日・・・
今度は、一緒にプールに行くことになった。(理由は前回同様な感じ)
その夜、フルートは水着を両手に嬉しそうにハーメルに話しかけた。
「ねっ、ハーメル〜♪私この水着似合うかなぁ」
そう言って、ひまわり柄の白いビキニをハーメルに見せるフルート。
その水着を見たハーメルは、すぐさま真っ赤になった。
「うわっ///お前ビキニなのかよっ」
「だってー。せっかくのプールなのよ〜明日」
「・・・ビキニか」
「なーによっ!何か文句ある!?」
ハーメルは思った。ビキニは嬉しいが、
その可憐なビキニ姿を他の男に見られるのは激しく嫌だ。
そんな考えで頭をめぐらすハーメルだが、フルートはそれをネガティブに受け止めた。
「ちょっと・・・不満な表情ね」
「そ、そんなことねーぞ馬鹿!」
「じゃあ、何考えてたのよっ」
このままではフルートが誤解してしまう。
ハーメルは、そう判断すると顔を赤らめたまま、ぶっきら棒に呟いた。
「・・・お前のビキニ姿。他の男に見られたくねーんだよ」
それを聞くと、フルートは少しジーンとして頬をピンクに染めた。
「ハーメル・・・」
「バーカ!別にそういった意味じゃ・・」
「大好きっ!ハーメルっ!!」
気づいた時には、フルートはハーメルの首にギューッと抱きついていた。
一方スフォルツェンドでは・・・。
「お前、水着はあるのか」
クラーリィは、思い出したように隣で雑誌を読んでいるミュゼットに声をかける。
「ありますよ〜」
「まさか・・・スクール水着とかそういうオチじゃないだろうな」
「違うよ〜。今日、カデさんに水着見てもらって買ったものー」
それを聞いて、クラーリィの顔がハッとなる。
「か、買ったのか?」
「うん。なんで?」
「いや・・・ところで、その水着はどんな・・・」
そこまで言いかけると、クラーリィは自分が
たまらなくドキドキしていることに気づいた。
思えば、ミュゼットの水着姿を見るのは初めてではないのだろうか。
「私は、つながってる白のがよかったんだけど、カデさんがこっちにしろって言って」
「・・・それで・・・?」
「それにしたの」
さすがに、今着て見せてくれないか?など下劣なことは聞けない。
だけど、今すぐにその水着姿を拝みたい自分がいるのも本当だ。
そこで、クラーリィは顔をほんのり赤らめながら、遠まわしに呟いた。
「明日着る前に、もう一度今試着してみたらどうだ?」
「ふぇ、なんで?もうお店で試着したよ」
「カデンツァは何て言ってた」
「うー・・私はその水着着て恥ずかしくてたまらなかったけど、
可愛いっ、せくしーって誉めてくれました・・・」
「可愛くてセクシーなのか!?!?」
「クっクラ!?」
・・・思わず大声を上げてしまうクラーリィ。
このままでは、理性のない男と同レベルになってしまう。
クラーリィは「すまん、何でもない」と言い直すと同時に、
「オレより先にミュゼットの水着姿を見るとは・・・おのれカデンツァめ」
としょうもない闘志をメラメラ燃やしていた。
これをカデンツァが聞いたら、
『アンタがヘタレだから私がついていってあげたんでしょーが!何その言い草!』
とキレて毒物注射で襲われること間違いなしだが。
「ところで、お前はセクシーなの苦手だろう。なんでそれにしたんだ。
カデンツァに脅されたのか?」
「ううん。あのね・・・・これだったら・・・・クラが喜ぶって」
最後の方では声が小さくなるミュゼット。
その照れた表情があまりにも可愛すぎる。
クラーリィは思わずミュゼットを抱きしめたい衝動に駆られてしまっていた。
しかし、働くのは確固とした理性。
(抑えろ・・・抑えるんだオレ)
「・・・明日、晴れるといいな・・・」
「うん!」
しょっぱなから暴走気味のクラーリィと、
何も危険を感じていない無邪気に笑うミュゼット。
こうして、前夜は刻々と過ぎていくのだった。
「へー、今度はプールか」
「クラーリィはん、今度はちゃんと連絡してきたわー・・・前回脅したんが効いたんやわ」
アリアの言葉に、サスフォーは苦笑いする。
「じゃあ水着用意しないとな・・・大胆なの着るなよ」
「はーい」
オルファリオン夫妻は相変わらず普通に仲良しだった。
そして、アンセムにて。
「どうしよう」
サイザーが困った様子で、ライエルに尋ねた。
「どうしようって、行きたくないんですか?」
ライエルが聞き返すと、サイザーは俯く。
「・・・私は泳げない」
恥ずかしそうに呟くサイザーを、ライエルはそっと慰めた。
「大丈夫ですよ、泳げなくても・・・みんなと一緒にわいわい騒ぐだけで、楽しいから」
「ライエル・・・」
サイザーは嬉しそうに、ライエルの顔を見た。
だが本当は、
(ライエルは水着の女を見ると鼻血を出して倒れる!プールが血に染まる!大変だ!)
と、逆に心配なのはこっちだった。
しかし、カデンツァは連絡の時に「鼻血を出す前に眠らせる」だの「薬を使う」だの
色々な解決策を出してくれた。カデンツァなら確かに実行可。
(心配はなくなったわけじゃないけれど、確かに楽しそうだし・・・
・・・やっぱり、行くことにしよう)
サイザーはそう思い、出かける準備を始めた。
さて、次の日は見事に快晴だった。
立ち止まるだけでも汗が噴き出すような真夏日。まさにプール日和である。
「やっほー!みんなぁ〜♪」
待ち合わせ場所にすでに集まっているメンバー達に手を振るフルート。
その半歩後ろには暑さで朦朧としたハーメルがノロノロと歩いていた。
「イェーイ♪アウトドアぶりー」
「お久しぶりなのです〜」
アウトドアで共に過ごしたメンバーとはあまり変わらないが、
トロコルだけはこの日は参加していなかった。
というのも、丁度二人っきりのデートの予定にぶつかってしまったらしい。
メンバーが集まったのを確認すると、アリアが意気揚々に声をあげた。
「ほな、更衣室いこか!」
「はいー♪」
ミュゼットもニコニコしながらついていく。
そこでクラーリィは、思わずその腕をガシッと掴んだ。
「・・・クラ?」
よく見ると、クラーリィの顔が赤い。
更衣室に流れ込んだ後のミュゼットの姿に覚悟がまだ決められない心理のせいか、
クラーリィもその表情にもどかしさが残っているのだ。
「ふぇ?どしたのクラ」
「いっ・・・いや別に何も」
「どこまでついてくるの?」
「は・・・?」
気づくと、すでに女子更衣室の目の前だった。
「クラーリィはん!!うちらの着替えのぞくつもり?
言っとくけどうちの裸は高くつくでぇ!!」
「やめんか!他の奴に見せるな!」
「冗談やて」
何気に見せ付けている感じのオルファリオン夫妻。
「きゃー変態〜」(超棒読み)
エリは興味なさげ。
クラーリィは、「そんなんじゃない!!」と怒鳴ると、すぐさま引き返そうとした。
しかし。
「な・・・なんだこれは」
目の前には真っ赤な水溜りが広がっていた。
さらに視線を向こうへとスライドすると、
その水溜りの上に倒れている男がいる。
「・・・た・・・たすけて」
干からびたライエルが血の海の上でうごめいている。
それを上から見下すようにハーメルが溜め息をついていた。
「全く。お前、『更衣室』ってだけで鼻血出すなよなー。
ったく先が思いやられるぜ」
・・・早くも前途多難といったようである。
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