「花火もまた沢山集まったことだし!一気に火つけちゃえっ」
リコーダーは両手にそれぞれ10本ずつ花火を握るとまとめて一気に点火した。
周りが止める間もなく、それらの花火は物凄い勢いでいろんな色の火花を散らす。
「あはは〜っ!!すごいすごいーーvvねぇーヴァルヴーーvvv」
そう言って、花火の束をヴァルブに突き出して大ニコニコで笑うリコーダー。
「やっ!やめろ!!人に向けるなっ」
「だってー楽しいんだもん!」
すると、ハーメルがここぞとばかりに父親らしく一喝した。
「リコーダー!花火を人に向けるなっ」
「うっさいわねぇー!!パパはあっちにすっこんでてよ!!」
「花火をこっちに向けるなっ!!危ないだろっ(汗)」
「やっぱ花火はこうでなくっちゃあ〜♪♪」
もはや、フルートも止めに入ろうとも時すでに遅しだった。
そんなリコーダーに続き、いたずら好きの双子リズメロも真似をしようとしていた。
「わーいっ!リコーダーお姉ちゃまのかっこいい!」
「あたしもおんなじのやるーっ」
それを聞いて、クラーリィとミュゼットは顔を青ざめた。
リズムとメロディは、カノンやノエルのようなお利口さんとは違い、
小学校でもいろんな意味で問題児といわれてるほどのイタズラ好きなおてんば双子なのである。
「コラッ!真似をするなっ!!お前らには危険すぎる!
 というかまた何かしでかすからやめなさい!」
「そうよ、あなたたちはこっちのヘビ花火にしておきなさい。ね?」
そう言って、どこから取り出したのか懐からヘビ花火を取り出して微笑むミュゼット。
「・・・お前・・・ヘビ花火好きだな」
愛妻家クラーリィとはいえども、何故ミュゼットが
こんなにヘビ花火が好きなのかは未だに謎である。
そんな風にワイワイガヤガヤと盛り上がってる中、
サスティンはひとり線香花火に夢中になっていた。
フルートは愛娘の一人である、自分の母親によく似たその娘に優しく声をかけた。
「サスティン、線香花火してるの?平和でいいわねぇ〜♪
 お姉ちゃん達ったら、もうすごいことになってるから、
 貴女の花火を見てると心が和むわ・・・」
「うん。きれいなのー」
パチパチと小さく閃光する線香花火。
すると、ポタン・・・と火が落ちて消えてしまった。
そんな美しくも儚いのが線香花火である。
「あらあら、消えちゃったわねぇ〜サスティン」
その時であった。
「・・・誰かが、命を落とすかもしれません」
「サスティン!?!?」
このどっかで聞いたことのある台詞!!
フルートは驚愕に口をあんぐり開けたまま、
やはりこの子は自分の母親の生まれ変わりなのだということを深く認識したのであった。

「ど、どういうことよサスティン・・・命を落とすって」
「・・・はっ!ピアノ姉さん、今私、何か言った!?」
どうやらサスティンはトランス状態だった模様。
「ど、どう思う・・・ピアノ姉さん」
「な、なんか当たりそうで怖い・・・」
真面目な性格のピアノとハーディが、慌てて談義を始めた。
しかし、ハーメルは楽観的だ。
「そう簡単に死ぬわけねーって!」
「そうよ、悪い方に考えると悪い予言は当たっちゃうものなのよ」
フルートも付け加える。

するとハーメルはフルートを指差して言った。
「お前らはこのタフなフルートの血を半分引いてるんだぞ!
 こいつガケから落ちても魚に食われても死なないんだぜ!
 だからその血を引いてりゃそー簡単に死ぬわけねーだろ、アハハハハ」
ハーメルが笑う。
だが、その言葉でフルートがキレた。
「なんですってぇ!?あんただってバイオリンジェットで何回飛んでも死なない
 殺したって死なない頑丈キャラでしょーがー!!」
さっきミュゼットが使わなかったねずみ花火を、ハーメル目掛けて発射するフルート。
「ぎゃー!やめろフルート!」
「今日という今日は許さないからねー!」
「クラベス・・・君の両親、ケンカしてるけど」
「いいんだよ、いつものことだからほっとけ」
ライエルとサイザーも驚くコカリナたちを同じように言って宥めている。
日常茶飯事のケンカ。
ただし、今日はフルートは花火という武器を持っている。
「リコーダー!私が許可するわっ、ハーメルに攻撃仕掛けなさーい!」
「了解、ママっ!パパ、ママをいじめたら許さないわよー!」
リコーダーはこっそり買い足したらしいロケット花火をハーメルの方に発射する。
「ぎゃあああ!母さんもリコーダーもやめろー!」
「フルートおばさんっ!この騒ぎを夫婦喧嘩で煽らないでください!」
クラビもヴァルヴもなす術無し。
「カノンさん、私たちもサスティンちゃんの線香花火に参加させてもらおう」
「う、うん・・・」
関わらないのが一番、とヴィオリーネたちも逃げ出す。

そこに救世主が現れた。
「無駄なケンカはそこまでよっ!」
ピアノの旋律。そして次の瞬間・・・リコーダーの持っていた花火の火が消えていた。
「!?」
驚いて皆が動きを止めてそっちを見ると、オカリナがピアノを構えて立っていた。
先程火を消したのは、水の精霊らしい。
「オカリナ、よくやったぞ!」
ライエルとサイザーは娘の勇姿を褒め称えた。
するとオカリナは語る。
「だ、だって、ちゃんと最初に登場したのに、出番全然なかったんだもの・・・
 私だって・・・ちょっとは話に登場したかったもん・・・」
「オカリナちゃん、色々大変だね・・・」
ドルビーが同情して、オカリナの肩をポン、と叩いた。

「オ・・・オカリナちゃんっ」
オカリナのその言葉に、ギクッとするリコーダー。
すると、娘に続いてライエルが涙を呑みながら訴え始めた。
「そうだよっ!なかなかライサイが登場できないってことで登場させてもらったのに
 この扱いは何なんだい!?光野でも優羽でもいいから、
 ボクとサイザーさんのラブラブ風景も描いて下さいよぉぉぉ!!!」
「おい、お前何一人で叫んでるんだ・・・」
ハーメルが呆れ顔で親友の表情を眺めている。
「まぁ、ライエル。私はさっきからずっと楽しんでいるぞ?」
「ハッ!サイザーさんっ!!」
「ほら、ライエル。線香花火がまだ残っているぞ。一緒にやらないか?」
「(感動)サイザー・・・」
ライエルはサイザーから花火を受け取ると、
二人でほのぼのと小さな火花に見惚れていた。
「きれいだな・・・」
「ええ・・今日きてよかったですね」
騒がしかった場が一点してほのぼのとしたムードに変わる。
それを見て、クラベスはぼんやりと呟いた。
「今日来てる夫婦の中で、一番平和だな」
と。


さて、そんなこんなで夜もすっかり更け込み、
騒がしくも楽しい楽しい花火大会はお開きへと近づいていた。
「さぁっ!花火のトリといえばやっぱりコレでしょう!!」
そう言って、リコーダーは打ち上げ花火の素を
ヴァルヴとクラビに手渡した。
「??リコーダー・・・まさかコレ」
「セッティングお願いねvv」
「やっぱりそういう役回りなのかーーーー!!!」
彼氏と兄を下僕のようにこき使うリコーダーは健在であった。

そして。
市販の打ち上げ花火が、空に上げられる。
空に咲く小さな夜の花は、みんなの心を奪うのに十分すぎるほどだった。
「きれいねぇ・・・」
「やっぱり最後は打ち上げ花火だよなぁ」
いろんなことがあったけど、何が楽しいって、
やっぱりみんなでこうしてワイワイと騒ぐ時間を共有することである。
空を仰ぐ一人ひとりみんなが、いい表情をしていた。

「来年もやりたいね!」
リコーダーは空に浮かぶ花火を瞳に焼付けながら、
嬉しそうな表情でそう言った。

そして、心の中で再び決意したのである。

・・・来年もロケット花火を撃ち放とうと。






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