ソフトクリーム屋は、田舎の山の中の休憩どころ、といった雰囲気。
エアコンはないが十分涼しかった。
「ここで暫く待ってれば、ドルチェが迎えに来ると思うわ!
 今、水晶で連絡入れておいたから」
カデンツァが言う。
「カデンツァのソフトクリームも頼んどいたよー!チョコ味でよかった?」
「うん」
「私はバニラにチョコスプレートッピング!」
「うち、夕張メロン味」
「ミュゼットは何にするの?私はストロベリーにするけど」
「私もそれがいいですー」
「私はチョコバニラのミックス味ですわー」
女の子たちは甘いものが好き。皆盛り上がっている。
「けっ、女って甘いものがあればすぐ機嫌よくなるんだもんな、単純だよな」
「そうか?オレもけっこう好きだけどな」
「お前はガキだからだろ」
そういいつつハーメルはサイズの大きいソフトクリームを頼んでいた。
「そう言うハーメルは食い意地張りすぎ」
トロンは呆れながら、コルネットと同じチョコバニラのミックス味を頼んでいる。
ライエルとサイザーはシンプルなバニラ味を頼んで、
早々と見晴らしのいい席に座って一緒に食べていた。相変わらずほのぼのだ。
トロンとコルネットはミックス味は得した気分になるとかいう話で盛り上がり、
ハーメルはあっというまに食べ終わってしまいフルートに分けてくれとねだり、
オルファリオン夫妻は交換してたり・・・と、それぞれ仲がよさそう。
その中、さっきケンカをしてしまったクラーリィとミュゼットは、
間にエリやカデンツァたちをはさんで座っていた。
クラーリィもミュゼットも不機嫌オーラを出してるが、
エリ達も『巻き込むんじゃねーよ空気が重いだろ今畜生』と言いたげな
不機嫌オーラを出していた。可哀想なのはオーボウとディオンである。
「クラーリィさんはソフトクリーム食べないんですか?」
ディオンが何とか会話を作ろうと言い出した。
「いや、オレはいい・・・アイスコーヒーでも買ってくる」
するとエリが哀れな弟の気持ちを察したのか、話を拾う。
「でも疲れたときは甘いものがいいって言いますよ?」
「コーヒーは汗をかいた後には向かないですよ、まだスポーツドリンクの方がお勧めです」
カデンツァが言った。
「チッ」
クラーリィは女性陣がミュゼットの味方だと知っていたので、
これ以上言い返すのも無駄だと思い、ジュースを頼みに向かう。
その時ミュゼットの前を通った。

「あ」
それに反応したミュゼットが、ソフトクリームを落としそうになる。
「おい!」
クラーリィは慌ててそれを横から支えてキャッチした。
「・・・」
「まったくドジだな、お前は」
よく見ると、クラーリィの服の袖にアイスがべったりついている。
「ご、ごめんなさい」
ミュゼットは今回は本当に悪いなと思ったらしく、しゅんとしてしまった。
その泣きそうな表情を見て、クラーリィもようやく先程のことを反省した。
暑い山道から涼しい店の中に入ったので、冷静になれたのもあるが。
「いや・・・その、オレも・・・」
「クラの服がアイスで汚れちゃったね」
ミュゼットはポケットからハンカチを取り出すと、袖を拭いた。
「・・・さっきはすまなかった」
クラーリィは、小さな声で謝った。

「ミュゼットちゃん、裏に綺麗な井戸水が涌いてるそうだから、そこで洗ってきたら?」
「ハンカチも一緒に洗えるし、丁度いいと思うわ」
助言するカデンツァとエリ。
クラーリィが反省してることを知って、この二人も許してくれたようだ。
二人は頷いて、一緒に店の裏に向かう。

そして暫くしてから戻ってきた二人。
クラーリィはようやくジュースを注文する。
「クラ、私にもちょっとちょうだいー」
「ったく、仕方ないな」
クラーリィの買ったジュースを少し貰うミュゼット。
どうやら仲直りが出来たようである。


和やかに休憩を終えた頃に、ドルチェが迎えにやってきた。
「皆さん、いかがでしたか?アウトドア」
それに対して、みんな話を弾ませた。
「フルートに殴られるわ散々だったなー」
「アンタが悪いんでしょうが!!」
と、フルートがすかさずハーメルに突っ込む。
しかし、一泊のアウトドアを経て、何やら周りのカップルたちは
一回り大きくラブラブになった模様であることは間違いなかった。
「楽しかったけど、やっぱり私たちはオチまとめ役だったわね」
「まー、連れのカップルがカップルなだけにね」
「ホンマ、ハラハラドキドキやで全く」
エリ、カデンツァ、アリアの三人は口々に
周りのカップルに聞こえるように声を大きくする。
「まー、でもそれなりに楽しめたけど」
エリは、かなり満足といった感じだった。
現地に着くと、いよいよ解散の時間が近づいてきた。
「あっというまでしたわね〜」
コルネットはそう言って大きく伸びをする。
「なんだか寂しいです・・・」
それに続いて、何やらミュゼットは寂しそうだった。
「また一緒に遊びましょうよ♪」
「せや!うちはいつでも大歓迎やで!」
それを聞いて、ミュゼットはパッと表情が明るくなった。
「うんっ!また遊びたいです♪」と。

さて、一同が解散すると、
クラーリィは、両脇にいるコルネットとミュゼットに
「満足か?」
と聞いた。
すると、二人ともめいっぱいの笑顔で「はい!」と返事をする。
その表情を見て、クラーリィも安堵の息をつく。
「いろいろあったが、無事に帰れて何よりだ」
そう言いつつも、何気にクラーリィもこのアウトドアを楽しんでいたのだった。


こうして、色々ハプニングがあったアウトドアも、
その分得るものも大きく終了したのであった。





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