こうして便利なアイテムを手に入れたフォルたちは、クラーリィ探しを始めた。
レベル調整を最強にすると表示される点は一つだけ。
スフォルツェンド最強の法力使い、クラーリィである。
「居たー!行くわよシンフォニーくん!」
「は、はぃい!!」
フォルに引っ張られ、クラーリィが居るであろう部屋に二人は飛び込んだ。

「クラーリィさんこんにちはー!」
「・・・お前ら、何でここに」
明らかに不機嫌そうな顔を見せたクラーリィ。
またフォルにゲンコツを食らわせようとしたが、その寸前で
目の前に『立入許可証』を突き出され、クラーリィは舌打ちをした。

「取材に来ましたー」
「話すことなど無い」
「いいじゃないですかぁ、何か暴露してくださいよ」
フォルがインタビューをしつつ、クラーリィに一服盛る方法を探る。
クラーリィの傍には飲みかけのカフェオレが置いてある。
この中に入れればいいだろうが、チャンスが無い。
フォルがシンフォニーをつっついた。
(ひ、ひぃ〜・・・許してください、クラーリィさん!)
シンフォニーは、カメラを取り出してフラッシュをたいて撮影。
「うわっ」
眩しさにクラーリィが顔を覆った瞬間に、フォルが自白剤を仕込んだ。

「ほらー、いいじゃないですか」
「くどいな、全く・・・話すことは無いと言っただろう」
クラーリィは都合よく、カフェオレを飲み干した。
よっしゃ!と思うフォル。
「ふふふふ」
「ん?お前今小さくガッツポーズしなかったか?」
「気のせいです、クラーリィさん」
「全くお前という奴は、いつもいつも・・・・
 大体だな、まるで私はお前の担任教師のようではないかと常日頃から」
クラーリィの口数が増え始めた。
どうやら薬が効いてきたようだ。
「すみません気をつけます〜」
フォルは話を受け流しつつ、うまく方向を切り替える。
「つまりオレが言いたいことはだな」
「まあまあ、クラーリィさんの怒りはわかりましたから、
 とにかく愚痴りまくってください、話せばすっきりしますよ」
フォルはどうにか暴露させる方向に持っていった。

すると。
「全く最近は本当に調子が狂っている・・・
 いつもどおりにきっちり材料を量って作ったカフェオレが、
 いつもよりも苦かったりして、本当に自分でも空回りしているのだ」
とクラーリィが悔しそうに言った。
「あ、あはは・・・そういうこともありますよ」
いつもより苦いのは薬を入れたからである。
やばいバレたか!?と、フォルは焦った。
「自分で作っておいて不味いと思うとは笑えることだろう!」
やけくそ気味にクラーリィは言う。
「に、苦いの不味かったですか」
「そうだ!普通のコーヒーも飲めないわけではない、決して!
 だが甘党なのだから自分で作ったときくらいは・・・」
クラーリィの暴露話が始まったようだ。
(あ、甘党だったのか・・・意外にも・・・)
と思いつつ、フォルはメモを取る。
「オレは甘党だから苦いのは我慢できても好きではない!」
クラーリィは言う。
「我慢できるんならいいじゃないですか」
「そうだ、だから我慢できん奴が気に食わんのだ!
 だいたい粉薬が苦くて飲めんだなどと言う奴が間違っている!
 オレだって苦い薬は大嫌いだ!だが耐えてきたし今でも耐えている!」
「はぁ・・・だから耐えてない人が許せないと」
「そうだ!今はそんなことはないが昔のミュゼットはだな・・・」
「ミュゼットさんがどうかしましたか」
「苦い粉薬が嫌だと言って、オレはわざわざ幼児用のゼリーオブラートを
 買いに行かされることになったのだ!」

どんどん話が逸れてきた。
「はぁ」
フォルもあっけにとられるばかりだ。
「そんなものがあるのかと知ったときに便利な世の中になったと思うと同時に、
 何でオレが幼い時代にそれがなかったのだと思った!」
「そ、そうですね・・・」
「幼い時代のオレがどれだけ必死に耐えてきたと・・・!
 リュート王子のところに遊びに行くには病気早く治さなきゃいけないとか思って
 苦い薬を必死になって飲んだんだぞ・・・!」
「で、でもその頃我慢したから今はちゃんと飲めるんじゃないですか?」
シンフォニーがフォローする。
「そうだ、あの時に培った忍耐力があるからこそ・・・
 だがとにかく、甘いものばっか食うなとか薬をちゃんと飲めとか
 今まで言ってきたが・・・オレだって甘党なんだ!
 それでも耐えているというのにあいつはぁ・・・」
クラーリィはどうやらそこに鬱憤が溜まっていたらしかった。
「・・・この前のカデさんとの喧嘩の原因は?」
フォルは尋ねてみる。
するとクラーリィは答えた。
「ミュゼットとカデンツァがでっかいケーキを二人で食っていたからだ!」

・・・どうやら仲間はずれにされてムカついたのと、
普段自分が太るからと耐えていることを普通に目の前でやられたことで
イライラしてミュゼットを説教し、二人が喧嘩になって、
巻き込まれたカデンツァがブチ切れてしまったようだった。


そして、城を出て。
「はー、クラーリィさん甘党ねぇ・・・意外な新事実発覚ではあるわね」
フォルはメモを見ながら呟いた。
「でもイメージ壊された!って女官たちが怒り出して
 うちの会社にクレームつけてきたらどうします?」
シンフォニーは心配性である。
すると、フォルが言った。
「でもこのゼリーオブラートのことは業者さんに教えてあげましょう、
 もしかしたら喜んでスポンサーになってくれるかもしれないじゃない」
「うまいですね、フォルさん・・・」
シンフォニーはまた溜息をついた。



数日後。
「カデンツァ、どうも最近花粉症気味でな・・・薬をくれ」
「はい」
「何だ、これは」
「子供用鼻炎緩和シロップ・・・こっちの方がクラーリィさん好きでしょ」
「ふっ、ふざけるな!」
カデンツァにおちょくられ、クラーリィはますます不機嫌になる。

そしてその花粉症のような症状は、実は
あのノクターンが作った自白剤の副作用であったようだ。

(今度はこの炎症を抑える成分を入れてみるか・・・
 まあ、少々別の副作用が出るかもしれんがな)

などと考えるノクターンの新しい薬の餌食に、
クラーリィがなってしまうのは・・・近いうちのお話。